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札幌地方裁判所 昭和60年(行ウ)3号 判決 1989年9月29日

札幌市北区二三条西七丁目一八番地

原告

株式会社ロック建設技術研究所

右代表者代表取締役

石山孝一

右訴訟代理人弁護士

入江五郎

札幌市東区北一六条東四丁目

被告

札幌北税務署長山角伸一

右指定代理人

小川賢一

山形武

高橋健治

斉藤昭

西谷英二

佐藤隆樹

主文

一  原告の請求をいずれも棄却する。

二  訴訟費用は原告の負担とする。

事実

第一当事者の求めた裁判

一  原告

1  被告が昭和五六年七月七日付で原告に対してした次の各処分をいずれも取り消す。

(1) 原告の昭和五一年一〇月一日から昭和五二年九月三〇日までの間の事業年度(以下「昭和五二年九月期」という。)以後の法人税の青色申告の承認の取消処分

(2) 原告の昭和五二年九月期の法人税についてした更正処分のうち所得金額一一七二万二二一八円を超える部分並びに過少申告加算税及び重加算税の各賦課決定処分

(3) 原告の昭和五二年一〇月一日から昭和五三年九月三〇日までの間の事業年度(以下「昭和五三年九月期」という。)の法人税についてした更正処分のうち所得金額一〇九四万九二九四円を超える部分並びに過少申告加算税及び重加算税の各賦課決定処分(いずれも国税不服審判所長が昭和五九年一〇月三〇日付でした審査裁決により一部取り消した後のもの)

(4) 原告の昭和五三年一〇月一日から昭和五四年九月三〇日までの間の事業年度(以下「昭和五四年九月期」という。)の法人税についてした更正処分のうち所得金額二〇四五万四七六〇円を越える部分及び重加算税賦課決定処分(いずれも被告が昭和五六年一一月二八日付でした異議決定により一部取り消した後のもの)

2  訴訟費用は被告の負担とする。

との判決を求める。

二  被告

1  原告の請求をいずれも棄却する。

2  訴訟費用は原告の負担とする。

との判決を求める。

第二当事者の主張

一  原告の請求の原因

1  原告は、土木、建築の設計及び管理、地質及び土質の調査等を目的とする株式会社で、法人税法一二五条の規定よる青色申告の承認を受けた内国普通法人であるが、原告の昭和五二年九月期、昭和五三年九月期及び昭和五四年九月期の各法人税につき、被告に対して、法定の各申告期限までに、青色申告書により、別表一「確定申告額」欄(別表二ないし四「申告」欄)記載のとおりの金額を所得金額として確定申告をしたところ、被告は、昭和五六年七月七日付で、別表一「更正額」欄(別表二ないし四「更正」欄)記載のとおりの各更正処分及び過少申告加算税、重加算税の各賦課決定処分をするとともに、原告の昭和五二年九月期以後の法人税の青色申告承認の取消処分をした(これらの処分を以下「本件更正処分等」という。)。

2  そこで、原告は、昭和五六年九月二日、被告に対して本件更正処分等について異議申立てをしたところ、被告は、同年一一月二八日付で、青色申告承認の取消処分に対する異議申立てを棄却するとともに、別表一「異議決定額」欄(別表二ないし四「異議決定」欄)記載のとおり、昭和五二年九月期及び昭和五三年九月期についての各更正処分並びに過少申告加算税及び重加算税の各賦課決定処分に対する異議申立てをいずれも棄却し、昭和五四年九月期についての更正処分及び重加算税賦課決定処分の一部を取り消す旨の決定をした。

3  さらに、原告は、昭和五六年一二月二八日、国税不服審判所長に対して、審査請求をしたところ、国税不服審判所長は、昭和五九年一〇月三〇日付で、青色申告承認の取消処分に対する審査請求を棄却するとともに、別表一「審査裁決額」欄(別表二ないし四「審判裁決」欄)記載のとおり、昭和五二年九月期及び昭和五四年九月期についての各更正処分並びに過少申告加算税又は重加算税の各賦課決定処分については審査請求をいずれも棄却し、昭和五三年九月期についての更正処分並びに過少申告加算税及び重加算税の各賦課決定処分の一部を取り消す旨の裁決をした。

4  しかしながら、被告のした右各更正処分(前記異議決定又は審査裁決によって一部取り消された後のもの)には、抗弁事実に対する原告の認否の項において被告の主張事実を否認する限度において、原告の所得金額を過大に認定した違法があり、また、前記過少申告加算税及び重加算税の各賦課決定処分(前記・異議決定又は審査裁決によって一部取り消された後のもの)並びに青色申告承認の取消処分は、いずれも所定の要件を欠くにもかかわらずなされたものであって、違法である。

5  よって、原告は、被告に対して、請求の趣旨記載のとおり、本件更正処分等(前記異議決定又は審査裁決によって一部取り消されたものについてはその取り消し後のもの)の取り消しを求める。

二  請求原因事実に対する認否

請求原因1ないし3の事実は認め、同4の主張は争う。

三  被告の抗弁

1  昭和五二年九月期の所得金額について

原告の昭和五二年九月期の所得金額は、原告の申告所得金額一一七二万二二一八円に次のとおりの益金及び損金の加減算を施した後の三三九二万五五三三円である。

(1) 計上漏れ工事収入の益金算入 五七二万八〇〇〇円

原告は、別表二付表「工事収入」欄記載のとおり、日鉱エンジニアリング株式会社外六名から、測量調査等の工事(以下「本件昭和五二年九月期工事(以下「本件昭和五二年九月期工事」という。)を同欄金額の項記載の請負代金学で請け負ったが、工事の延期、遅延等のため当期中に工事が完了せず、右請負代金を当期中に取得しなかったとして、これを当期の益金に算入していない。

しかしながら、本件昭和五二年九月期工事は、いずれも同表同欄工事完了期日の項記載の頃に完了しているのであるから、これによる工事収入合計五七二万八〇〇〇円は当期の益金に算入すべきである。

(2) 外注費の損金算入の否認 九一三万六〇〇〇円

原告は、別表二付表「外注費」欄記載のとおり、当期中に東光産業株式会社二名に対して測量調査等の外注を行ったとして、その外注費合計九一三万六〇〇〇円を当期の損金に算入している。

しかしながら、原告が右のような外注を行ったことはなく、右外注費は架空のものであるから、右損金算入を否認すべきである。

(3) 材料費の損金算入の否認 二八六万五〇〇〇円

原告は、有限会社白石工業に対する材料費として未払金二八六万円、既払金八一万四七〇〇円の合計三六七万四七〇〇円を当期の損金に算入している。

しかしながら、別表二付表「材料費」欄記載のとおり、右未払金二八六万円についてはそれにそう材料購入の事実はなく、右材料費は架空のものであり、また、既払金のうちの五〇〇〇円は前期における材料購入に対する未払金の弁済として支払われたものであって、当期の益金に対応するものではないから、これらの合計二八六万五〇〇〇円について損金算入を否認すべきである。

(4) 消耗品費の損金算入の否認 四二七万八三一五円

原告は、株式会社岩崎に対する消耗品費三九八万二三二五円、セガセイコー株式会社に対する消耗品費一五一万七七七〇円及び株式会社三桜社に対する消耗品費一三五万一〇〇〇円を当期の損金に算入している。

しかしながら、別表二付表「消耗品費」欄記載のとおり、右のうち、株式会社岩崎に対する消耗品費未払金一九五万円、セガセイコー株式会社に対する消耗品費未払金七五万六〇〇〇円及び株式会社三桜社に対する消耗品費未払金九四万八〇〇〇円についてはいずれも消耗品購入の事実はなく、右消耗品費は架空のものであり、また、株式会社岩崎に対する消耗品費既払金四七万九〇六五円及びセガセイコー株式会社に対する消耗品費既払金一四万五二五〇円はいずれも前期における消耗品購入に対する未払金の弁済として支払われたものであって、当期の益金に対応するものではないから、これらの合計四二七万八三一五に円ついて損金算入を否認すべきである。

(5) 新聞図書費の損金算入の否認 一九万六〇〇〇円

原告は、別表二付表「新聞図書費」欄記載のとおり、株式会社紀伊国屋書店から新聞図書を購入したとして、新聞図書費未払金一九万六〇〇〇円を当期の損金に算入している。

しかしながら、右新聞図書の購入の事実はなく、右新聞図書費は架空のものであるから、右損金算入を否認すべきである。

2  昭和五三年九月期の所得金額について

原告の昭和五三年九月期の所得金額は、原告の申告所得金額一〇九四万九二九四円に次のとおりの益金及び損金の加減算を施した後の三八八九万〇八八五円である。

(1) 計上漏れ工事収入の益金算入 三〇二二万二〇〇〇円

原告は、別表三付表「工事収入」欄記載のとおり、札幌市外六名から測量調査等の工事(以下「本件昭和五三年九月期工事」という。)を同欄金額の項記載の請負代金額で請け負ったが、工事の延期、遅延等のため当期中に工事が完了せず、右請負代金を当期中に取得しなかったとして、これを当期の益金に算入していない。

しかしながら、本件昭和五三年九月期工事は、いずれも同表同欄工事完了期日の項記載の項に完了しているのであるから、これによる工事収入合計三〇二二万二〇〇〇円は当期の益金に算入すべきである。

(2) 外注費の損金算入の否認 八六七万〇〇〇〇円

原告は、別表三付表「外注費」欄記載のとおり、当期中に丸日日本測量設計株式会社三名に対して測量調査等の外注を行ったとして、その外注費合計八六七万円を当期の損金に算入している。

しかしながら、原告が右のような外注を行ったことはなく、右外注費は架空のものであるから、右損金算入を否認すべきである。

(3) 工事収入前期計上分の益金減算 五七二万八〇〇〇円

原告は、本件昭和五二年九月期工事による工事収入五七二万八〇〇〇円を当期の益金に算入している。

しかしながら、右工事収入は、前記のとおり、昭和五二年九月期の益金に計上すべきものであるから、これを当期の益金から減算すべきである。

(4) 材料費等の損金算入 二六三万三五二九円

原告は、別表三付表「材料費」、「消耗品費」及び「新聞図書費」各欄記載のとおり、当期において、有限会社白石工業に対して材料費八七万六一〇五円を、株式会社岩崎外二社に対して消耗品費合計一六四万八六二四円を、株式会社紀伊国屋書店に対して新聞図書費一〇万八八〇〇円を、それぞれ負担して支出しているので、これらの合計二六三万三五二九円を当期の損金に算入すべきである。

(5) 事業税額の損金算入 二五八万八八〇円

昭和五二年九月期における原告の所得金額が前記のとおり増加したことに伴う原告の昭和五二年九月期の事業税の増額分二五八万八八八〇円は、当期の損金に算入すべきである。

3  昭和五四年九月期の所得金額について

原告の昭和五四年九月期の所得金額は、原告の申告所得金額二〇四五万四七六〇円に次のとおりの益金及び損金の加減算を施した後の四四二六万〇五四〇円である。

(1) 計上漏れ工事収入の益金算入 一九〇七万八〇〇〇円

原告は、別表四付表「工事収入」欄記載のとおり、株式会社宅地開発研究所以外一〇名から測量調査等の工事(以下「本件昭和五四年九月期工事」という。)を同欄金額の項記載の請負代金額で請け負ったが、工事の延期、遅延等のため当期中に工事が完了せず、右請負代金を当期中に取得しなかったとして、これを当期の益金に算入していない。

しかしながら、本件昭和五四年九月期工事は、いずれも同表同欄工事完了期日の項記載の頃に完了しているのであるから、これによる工事収入合計一九〇七万八〇〇〇円は当期の益金に計上すべきである。

(2) 外注費の損金算入の否認 三六四一万二〇〇〇円

原告は、別表四付表「外注費」欄記載のとおり、当期中に東光産業株式会社外九名に対して測量調査等の外注を行ったとして、その外注費合計三六四一万二〇〇〇円を当期の損金に算入している。

しかしながら、原告が右のような外注を行ったことはなく、右外注費は架空のものであるから、右損金算入を否認すべきである。

(3) 仮設費の損金算入の否認 一四〇万〇〇〇〇円

原告は、別表四付表「仮設費」欄記載のとおり、当期中に伊藤木材店から木材を購入したとして、その買受代金一四〇万円を仮設費として当期の損金に算入している。

しかしながら、原告が右木材を購入したようなことはなく、右仮設費は架空のものであるから、右損金算入を否認すべきである。

(4) 雑費の損金算入の否認 一三二万〇〇〇〇円

原告は、別表四付表「雑費」欄記載のとおり、東京における活動費一三二万円を雑費として当期の損金に算入している。

しかしながら、原告が右活動費を支出したようなことはなく、右雑費は架空のものであるから、右損金算入を否認すべきである。

(5) 過大役員報酬の損金算入の否認 三八万九七四八円

原告は、当期において、東京都中野区東中野一丁目三二番一号サンクス東中野七〇三号室の原告の東京事務所に原告の代表取締役石山孝一の長男の訴外石山孝を無償で居住させていた。

しかしながら、訴外石山孝と原告との間にはなんら雇用関係等はなく、訴外石山孝に対して給与等を支給すべき理由はないのであるから、右居室の年間賃貸料相当額三八万九七四八円は、原告の代表取締役石山孝一に対して供与された経済的な利益というべきであり、したがって、これを加えた原告がその代表取締役石山孝一に対して当期において支給した役員報酬の合計額一二三八万七四八円のうち、原告が株主総会の決議により報酬として代表取締役に支給することができる金額の限度額一二〇〇万円を越える部分については、過大な役員報酬として、損金算入を否認すべきである。

(6) 工事収入前期計上分の益金減算 三〇二二万二〇〇〇円

原告は、本件昭和五三年九月期工事による工事収入三〇二二万二〇〇〇円を当期の益金に算入している。

しかしながら、右工事収入は、前記のとおり、昭和五三年九月期の益金に計上すべきものであるから、これを当期の益金から減算すべきである。

(7) 材料費等の損金算入 一二一万八九七八円

原告は、別表四付表「材料費」、「消耗品費」及び「新聞図書費」各欄記載のとおり、当期において、有限会社白石工業に対して材料費七二万三五四〇円を、株式会社岩崎外一名に対して消耗品費合計四九万〇四三八円を、株式会社紀伊国屋書店に対して新聞図書費五〇〇〇円を、それぞれ負担しているので、これらの合計一二一万八九七八円を当期の損金に算入すべきである。

(8) 法人事業税額の損金算入 三三五万二九九〇円

昭和五三年九月期における原告の所得金額が前記のとおり増加したことに伴う原告の昭和五三年九月期の事業税の増額分三三五万二九九〇円は、当期の損金に算入すべきである。

4  本件更正処分等の適法性について

(1) 本件各係争事業年度における原告の所得金額は、以下のとおりであって、被告のした各事業年度についての更正処分(前記異議決定又は審査裁決によって一部取り消された後のもの)の認定にかかる所得金額を上回るものであるから、右各更正処分(前記異議決定又は審査裁決によって一部取り消された後のもの)は、いずれも適法である。

(2) また、原告、前記のとおり、本件各係争事業年度において、架空の外注費、材料費又は新聞図書費を計上してこれを資金に算入し、過少に法人税の確定申告をしたのであるから、これらの事実にかかる部分の税額に対してなされた各重加算税賦課決定処分(前記異議決定又は審査裁決によって一部取り消された後のもの)は、いずれも適法であり、また、原告は、前記のとおり、昭和五二年九月期及び昭和五三年九月期において、工事収入について過少に確定申告したのであるから、右事実にかかる部分の税額に対してなされた各過少申告加算税賦課決定(前記審査裁決によって一部取り消された後のもの)は、いずれも適法である。

(3) さらに、原告は、昭和五二年九月期において、前記のとおり架空の外注費等を計上したのであるから、右の所為は、法人税法一二七条一項三号所定の事由に該当し、右事業年度以後の事業年度についてなされた原告の法人税の青色申告承認の取消処分は、適法である。

四  抗弁事実に対する原告の認否

1  抗弁事実1の(1)ないし(5)の各前段の事実は、いずれも認める。

同各後段の事実中、株式会社北海地質工業所に対する外注費の支出が架空であることは認め、その余の事実はいずれも否認する。

2  抗弁事実2の(1)及び(2)の各前段の事実は、いずれも認める。

同各後段の事実は、いずれも否認する。

3  抗弁事実3の(1)ないし(5)の各前段の事実は、いずれも認める。

同各後段の事実中、原告が昭和五四年九月期において東京都中野区東中野一丁目三二番一号サンクス東中野七〇三号室の東京事務所を原告の代表取締役石山孝一の長男の訴外石山孝に無償で居住させていたこと、原告が代表取締役に支給することができる報酬の限度額が一二〇〇万円であり、当期においても右代表取締役に対して同額の報酬を支給したことは認めるが、その余の事実は否認する。

4  抗弁事実4の(1)ないし(3)の事実は、いずれも否認する。

五  原告の再抗弁

原告は、工事収入については、請負代金が支払われた事業年度における益金に算入すれば足りるものと考えて、本件各係争事業年度において被告主張のような経理処理をし法人税の申告をしたものであって、原告には国税通則法六五条二項(昭和五九年法律第五号所得税法等の一部を改正する法律による改正以前のもの)所定の正当の理由がある。

六  再抗弁事実に対する被告の否認

再抗弁の主張は、争う。

第三証拠関係

一  証拠関係は、本件記録中の書証目録及び証人等目録記載のとおりであるから、これを引用する。

二  理由中に引用した書証は、その成立について特に説示したものを除いて、いずれも当事者間においてその成立(原本の存在及びその成立)に争いがないか関係証拠によってその成立(又は原本の存在及びその成立))を認めることができる。

理由

一  本件更正処分等の経過等について

1  原告主張の本件更正処分等の経過(請求原因1ないし3の事実)、原告がその本件各係争事業年度の企業会計において被告が抗弁1の(1)ないし(5)、同2の(1)及び(2)並びに同3の(1)ないし(5)において主張するような益金不算入又は損金算入の会計処理をしこれに基づいて本件各事業年度についての原告の法人税の申告をしたことの各事実は、いずれも当事者間に争いがない。

2  そこで、以下においては、先ず、右益金不算入又は損金算入を否認する被告の抗弁の成否について検討する。

二  昭和五二年九月期の所得金額について

1  計上漏れ工事収入の益金算入について

原告が日鉱エンジニアリング株式会社外六名から別表二付表「工事収入」欄記載のとおりの本件昭和五二年九月期工事を同欄金額の項記載の請負代金額で請け負ったことは当事者間に争いがなく、乙第三一号証ないし第三三号証、乙第四五号証、乙第四六号証、原告代表者尋問の結果(第一、二回)及び弁論の全趣旨によれば、これらの請負契約は、いずれも測量、設計又は地質調査を目的とするものであって、昭和五二年九月期中である別表二付表「工事収入」欄工事完了期日の項記載の日を契約上の作業完了期限とするものであったことを認めることができる。そして、前掲乙第三一号証ないし第三三号証によれば、原告は、これらの請負契約のうち受注先新篠津村、後志支庁及び札幌土木現業所にかかるものについては、いずれも昭和五二年九月期中に契約の目的たる測量、設計又は調査を終えてその結果を受注先に引き渡したことを認めることができ、また、その余の請負契約については、契約上の作業完了期限までの作業の完了を妨げるべき特段の事情が存在したことを窺わせるような証拠はないこと、各請負代金の支払時期(甲第三三号証、乙第四五号証及び乙第四六号証によってこれを認めることができる。)が昭和五二年九月期の期末に近接していること(もっとも、受注先厚田村農業協同組合にかかる請負契約については、その請負代金の支払日が昭和五三年二月二七日であるけれども、前掲乙第四六号証によれば、右は関係請負工事の事業主体の変更、受益者による期成会の結成その他の特殊な事情によって代金の支払いが遅延したものであることを認めることができる。)、この種の請負契約の目的たる測量、設計又は調査の特質並びにこの種の請負契約における請負代金支払いに至るまでの一般的な手続及びそれに一般的に必要な日数等の事情に照らすと、原告は、これらの請負契約についても、昭和五二年九月期中にその目的たる測量、設計又は調査を終えてその結果を受注先に引き渡したものと推認するのが相当である。

原告代表者は、その尋問(第一、二回)において、本件昭和五二年九月期工事はいずれも作業が遅滞してその完了が翌期にわたった旨を供述するけれども、右供述は、一部において明らかに前掲書証と矛盾するものであるのみならず、右のような事態をもたらした具体的な事情の裏付けに欠けるものであって、とうてい採用することができず、かえって、原告としては、右のような工事収入については漫然と請負代金の支払いを受けた日の属する事業年度における益金として会計処理をしこれに基づいて法人税の申告をしていたものであるところ、本件更正処分等についての争訟段階に至ってその作業の完了時期が争点となるに及んで、益金の計上事業年度と作業の完了時期との符節を合わせて、右のような主張ないし供述をするようになったに過ぎないものであることを窺うことができる。

そして、右のような請負契約による収益の益金計上基準としては、請負契約の目的となった作業等の全部を完了して注文者に引き渡した日(引き渡しを要しない請負契約にあっては、作業等の完了した日)の属する事業年度の益金に算入計上すべきものであって(いわゆる完成基準)、右のような場合においていわゆる現金主義に依拠することは、企業会計上も公正妥当な会計処理の基準ということはできず、もとより法人税における損益計算の基準として許容される余地はない。

したがって、本件昭和五二年九月期工事による工事収入合計五七二万八〇〇〇円は、昭和五二年九月期益金に算入すべきである。

2  外注費の損金算入の否認について

原告が昭和五二年九月期における損金として計上した別表二付表「外注費」欄記載の外注費のうち支払先株式会社北海地質工業所に対する三二九万六〇〇〇円が架空のものであることは、当事者間に争いがない。

そして、右別表二付表「外注費」欄記載の外注費のうち支払先東光産業株式会社に対するもの及び丸日日本測量設計株式会社に対するものについては、原告代表者は、その尋問(第一、二回)において、原告は、昭和五二年九月期中に右両訴外会社(もっとも、甲第五号証及び右原告代表者尋問の結果によれば東光産業株式会社の代表取締役は原告の代表取締役石山孝一がこれを兼ねるものであり、また、丸日日本測量設計株式会社も、その後実質的には右石山孝一がこれを経営することになったものであって、いずれも原告の関連会社ということができるものであることを認めることができる。)に対して測量事務等を外注し、その代金については、原告の代表取締役石山孝一個人が原告のために右両訴外会社に立替払いをし、原告がその後の右別表二付表「外注費」欄計上年月日の項記載の日に石山孝一個人に対して右立替金を償還したものである旨を供述する(ただし、原告代表者の供述には、一部においてこれとは趣旨を異にする部分もあって、それ自体として矛盾しているところがある。)ほか、一見これに符合するかのごとき甲第六号証(丸日日本測量設計株式会社作成名義の領収書)、甲第一七号証の一及び甲第二八号証の一(いずれも原告作成名義の注文書)、甲第一七号証の二(東光産業株式会社作成名義の領収書)が存在する。

しかしながら、後に説示するとおり、右と同様に石山孝一個人が原告のために外注費の立替払いをし後に原告が石山孝一にこれを償還したとする取引は多数回かつ多額に及び、それ自体極めて異常な企業会計の処理であること、前記の丸日日本測量株式会社及び東光産業株式会社作成名義の各領収書の作成日付は、原告代表者の右供述とは明らかに符合しないこと、前掲甲第一七号証の一及び甲第二八号証の一(原告作成名義の注文書)の注文書用定型用紙は、昭和五六年六月以降に印刷されたものであって、後日に至って作成されたものであることが明らかであること、乙第七号証ないし第一〇号証、乙第二一号証の一、二及び弁論の全趣旨によれば、原告がこれらの外注費について右のような石山孝一個人による立替払い及び同訴外人に対する立替金の償還という主張をするようになったのは、本件更正処分等についての争訟の過程において、右外注費が前記両訴外会社に支払われてはおらず、石山孝一の配偶者の旧姓名義の口座又は仮名口座又は仮名口座に入金されていることが明らかにされた後の、本件訴訟に至ってからのことであって、当初から右のような主張をしていたものではないことが認められること、原告の本訴における関係書証の提出時期その他の弁論の全趣旨に照らすと、原告代表者の前記供述はとうていそのまま採用することはできないし、前掲各書証も右両訴外会社に対する前記外注費に見合う外注の事実を裏付けるものではなく、かえってそれが架空のものであることを推認させるものということができる。

したがって、原告が昭和五二年九月期における損金として計上した別表二付表「外注費」欄記載の外注費合計九一三万六〇〇〇円については、損金算入を否認すべきものである。

3  材料費、消耗品費及び新聞図書費の損金算入の否認について

原告代表者は、その尋問(第一、二回)において、原告が昭和五二年九月期において有限会社白石工業に対する材料費未払金二八六万円、株式会社岩崎に対する消耗品費未払金一九五万円、セガセイコー株式会社に対する消耗品費未払金七五万六〇〇〇円、株式会社三桜社に対する消耗品費未払金九四万八〇〇〇円及び株式会社紀伊国屋に対する新聞図書費未払金一九万六〇〇〇円を損金として計上したことにつき、当期中に右会計処理に見合う取引が存在した旨を供述するけれども、その内容が著しくあいまいであって、十分な具体性に欠け、なんらこれを裏付ける客観的な資料がないばかりか、かえって、乙第一号証及び弁論の全趣旨によれば、原告の経理処理と被告が国税不服審査の過程において行った右各取引の相手方に対する反面調査の結果とを対比すると、右各未払金の発生原因となるような取引は存在せず、これら材料費、消耗品費及び新聞図書費はいずれも架空のものである(なお、甲第一六号証の一、二が右のとおり認定、判断することの妨げとなるものではないことはいうまでもない。)ほか、原告が損金として計上した既払金のうち、有限会社白石工業に対する材料費五〇〇〇円、株式会社岩崎に対する消耗品費四七万九〇六五円及びセガセイコー株式会社に対する消耗品費一四万五二五〇円はいずれも前期における未払金の弁済として支払われたものであって、当期の益金に対応するものではないことが認められる。

したがって、原告が昭和五二年九月期において計上した損金のうち、材料費合計二八六万五〇〇〇円、消耗品費合計四二七万八三一五円新聞図書費一九万六〇〇〇円は、これを否認すべきである。

4  したがって、原告の昭和五二年九月期の所得金額は、原告の申告所得金額一一七二万二二一八円に以上の益金算入及び損金算入の否認による益金及び損金の加減算を施した後の三三九二万五五三三円となる。

三  昭和五三年九月期の所得金額について

1  計上漏れ工事収入の益金算入について

原告が札幌市外六名から別表三付表「工事収入」欄記載のとおりの本件昭和五三年九月期工事を同欄金額の項記載の請負代金額で請け負ったことは当事者間に争いがなく、乙第三三号証ないし第四一号証、原告代表者尋問の結果(第一、二回。ただし、後記の措信しない部分を除く。)及び弁論の全趣旨によれば、これらの請負契約は、いずれも測量、設計又は地質調査を目的とするものであって、当期の期間中である別表三付表「工事収入」欄工事完了期日の項記載の日を契約上の作業完了期限とするものであり、原告は、実際にも、これらの請負契約についていずれも昭和五三年九月期中にその目的たる測量、設計又は調査を終えてその結果を受注先に引き渡したことを認めることができる。

そして、右認定に反する原告代表者の供述が措信できないこと、右のような請負契約による収益の益金計上基準としては請負契約の目的となった作業等の全部を完了して注文者に引き渡した日の属する事業年度の益金に算入計上すべきものであることは、いずれも先に説示したとおりであって、本件昭和五三年九月期工事による工事収入合計三〇二二万二〇〇〇円は、昭和五三年九月期の益金に算入すべきである。

2  外注費の損金算入の否認について

原告が昭和五三年九月期における損金として計上した別表三付表「外注費」欄記載の外注費についても、原告代表者は、昭和五二年九月期における外注費についてと同様に、その尋問(第一、二回)において、石山孝一個人が原告のためにこれらの外注費の全部又は一部の立替払いをし後に原告が石山孝一にこれを償還したものであると供述し(ここでの原告代表者の供述が必ずしも前後一貫したものではないことは、昭和五二年九月期における外注費についてと同様である。)、これにそうかのごとき甲第一八号証ないし甲第二〇号証の各一(いずれも原告作成名義の注文書)、甲第一八号証の二(丸日日本測量設計株式会社作成名義の領収書)、甲第一九号証の二(日本テラゾーブロック工業株式会社作成名義の領収書)並びに甲第二〇号証の二(塚田設計事務所作成名義の領収書)が存在する。

しかしながら、原告代表者の右供述及び前掲各書証は、先に昭和五二年九月期における外注費の損金算入の否認について説示したところに準じた理由(同所挙示の証拠のほか、乙第一四号証、第一五号証及び乙第二二号証参照。なお、原告は、ここでは審査請求の段階において初めて前記のような石山孝一個人による立替払い及び同訴外人に対する立替金の償還という主張をするに至っている。)により、そのまま採用することはできないし、かえって右外注費が架空のものであることを推認させるものであって、原告が昭和五三年九月期における損金として計上した別表三付表「外注費」欄記載の外注費合計八六七万円については、損金算入を否認すべきである。

3  したがって、原告の昭和五三年九月期の所得金額は、原告の申告所得金額一〇九四万九二九四円に以上の益金算入及び損金算入の否認並びに被告の自認する益金減算及び損金算入による益金及び損金の加減算を施した後の三八八九万〇八八五円となる。

四  昭和五四年九月期の所得金額について

1  計上漏れ工事収入の益金算入について

原告が株式会社宅地開発研究所外一〇名から別表四付表「工事収入」欄記載のとおりの本件昭和五四年九月期工事を同欄金額の項記載の請負代金額で請け負ったことについては当事者間に争いがなく、甲第三五号証、甲第三六号証、乙第三一号証、乙第三六号証、乙第三八号証、乙第四一号証ないし第四四号証、乙第四七号証、乙第四八号証、乙第四九号証の一、二、乙第五一号証及び原告代表者尋問の結果(第一、二回。ただし、後記の措信しない部分を除く。)によれば、これらの請負契約は、いずれも測量、設計又は地質調査を目的とするものであって、昭和五四年九月期中である別表三付表「工事収入」欄工事完了期日の項記載の日を契約上の作業完了期限とするものであり、原告は、これらの請負契約についていずれも昭和五四年九月期中にその目的たる測量、設計又は調査を終えてその結果を受注先に引き渡したことを認めることができるか、昭和五二年九月期における計上漏れ工事収入の益金算入について説示したのと同様の理由によりこれを推認することができる。

そして、右認定に反する原告代表者の供述が措信できないこと、右のような請負契約による収益の益金計上基準としては請負契約の目的となった作業等の全部を完了して注文者に引き渡した日の属する事業年度の益金に算入計上すべきものであることは、いずれも先に説示したとおりであって、本件昭和五四年九月期工事による工事収入合計一九〇七万八〇〇〇円は、昭和五四年九月期の益金に算入すべきである。

2  外注費の損金算入の否認について

原告が昭和五四年九月期における損金として計上した別表四付表「外注費」欄記載の外注費の一部についても、原告代表者は、その尋問(第一、二回)において、昭和五二年九月期及び昭和五三年九月期における外注費についてと同様に、石山孝一個人が原告のために右外注費の立替払いをし後に原告が石山孝一にこれを償還したものである旨を供述するほか、これにそうかのごとき甲第七号証ないし第一〇号証、甲第一二号証、甲第一三号証及び甲第二四号証(いずれも丸日日本測量設計株式会社作成名義の領収書)、甲第一一号証(佐藤幸光作成名義の領収書)、甲第一四号証、甲第二五号証ないし第二七号証(白井企画設計株式会社作成名義の領収書)、甲第一五号証及び甲第二一号証ないし第二三号証の各二(いずれも東光産業株式会社作成名義の領収書)、甲第二一号証ないし第二三号証の各一及び甲第二八号証の四ないし八(いずれも原告作成名義の注文書)並びに乙第二七号証の一ないし四(内倉純外三名の作成名義の領収書)が存在している。

しかしながら、ここでの原告代表者の供述は、一層あいまいであったり、前後が矛盾し、供述自体の信用性が著しく乏しいものといわざるを得ないほか、原告代表者の右供述及び前掲各書証をそのまま採用することができないことは、先に昭和五二年九月期における外注費の損金算入の否認について説示したところと同様である(なお、同所挙示の証拠のほか、乙第一九号証及び乙第二〇号証参照。)。これに加えて、乙第二三号証の一、二によれば、丸日日本測量設計株式会社が昭和五四年九月期において原告の損金計上にかかる外注費に見合うような取引を実際に行い得るだけの企業実体を有していたかどうかには疑問が残る(なお、甲第三〇号証の一、二参照。)ほか、乙第二四号証によれば、商業登録簿上は昭和五一年から昭和五四年までの間には前掲臼井企画設計株式会社作成名義の各領収書に表示されたその所在地にはこれに該当する会社が見当たらないことを、乙第二五号証の一、二及び弁論の全趣旨によれば、株式会社東洋理水センターは、昭和五四年一二月に設立された会社であって、原告が外注費を支払ったとする当時には未設立であったことを、乙第二八号証及び原告代表者尋問の結果(第一回)によれば、原告が中部電化工業株式会社に対する外注費として損金計上している六〇万円は、右訴外会社が原告代表取締役石山孝一個人が所有していた建物を右石山孝一に明け渡すに際して立退料として右訴外会社に支払われたものであることを、それぞれ認めることができるのであって、これらの諸事情に照らすと、原告代表者の前記供述及び前掲各書証は、個別的にも全体としても、原告が昭和五四年九月期における損金として計上した前記外注費に見合う外注の事実があったことを認めるには足らず、かえって右外注費が架空のものであることを推認させるものというべきである。

したがって、原告が昭和五四年九月期における損金として計上した別表四付表「外注費」欄記載の外注費合計三六四一万二〇〇〇円については、損金算入を否認すべきである。

3  仮設費及び雑費の損金算入の否認について

原告代表者は、その尋問(第一、二回)において、原告が昭和五四年九月期において損金として計上した仮設費一四〇万円及び雑費一三二万円につき、その取引又は支出の内容を供述するけれども、必ずしも十分な具体性がなく、これを補強する証拠なくして直ちに右取引又は支出が存在したものと認めることはできないし、他にはこれを裏付ける客観的な資料がないのであるから、右仮設費及び雑費の合計二七二万は、架空のものとして、損金算入を否認すべきである。

4  過大役員報酬の損金算入の否認について

原告が昭和五四年九月期において東京都中野区東中野一丁目三二番一号サンクス東中野七〇三号室の東京事務所を原告の代表取締役石山孝一の長男の訴外石山孝に無償で居住させていたこと、原告が代表取締役に支給することができる報酬の限度額が一二〇〇〇万円であり、当期においても右代表取締役に対して同額の報酬を支給したことは、いずれも当時者間に争いがない。

そして、乙第三〇号証及び原告代表者尋問の結果(第二回)によれば、訴外石山孝と原告との間にはなんら雇用関係等はなく、原告が同訴外人に対して給与等を支給すべき法律関係にはなかったこと(原告代表者は、原告は訴外石山孝を東京事務所に滞在させて、補助をさせていたと供述するけれども、その具体的な職務内容等を明らかにせず、それだけでは原告と同訴外人との間に給与等を支給すべき原因関係が存在するものということはできない。)、右居室の年間賃貸相当額は、少なくとも三八万九七四円を下らないことの各事実を認めることができる。

したがって、原告は、その代表取締役石山孝一の長男を右居室に無償で居住させることによって当期中に右代表取締役に三八万九七四八円の経済的な利益を供与したものというべきであるから、これを加えた原告がその代表取締役石山孝一に対して当期において支給した役員報酬の合計額一二三八万九七四八円のうち、原告が代表取締役に支給することができる報酬の限度額一二〇〇万円を超える部分については、過大な役員報酬として、損金算入を否認すべきである。

5  したがって、原告の昭和五四年九月期の所得金額は、原告の申告所得金額二〇四五万四七六〇円に以上の益金算入及び損金の否認並びに被告の自認する益金減算及び損金算入による益金及び損金の加減算を施した後の四四二六万〇五四〇円となる。

五  本件更正処分の適法性について

1  以上に認定、説示したところに従えば、本件各係争事業年度における原告の所得金額は、いずれも被告のした各事業年度についての更正処分(前記異議決定又は審査裁決によって一部取り消された後のもの)の認定にかかる所得金額を上回ることになるのであるから、右各更正処分(前記異議決定又は審査裁決によって一部取り消された後のもの)は、いずれも適法である。

2  そして、原告は、昭和五二年九月期においては架空の外注費、材料費、消耗品費及び新聞図書費を計上し、昭和五三年九月期においては架空の外注費を計上し、また、昭和五四年九月期においては架空の外注費及び仮設費を計上して、それぞれこれを損金に算入し、過少に法人税の確定申告をしたのであるから、本件各係争事業年度のこれらの事実にかかる部分の税額に対してなされた各重加算税賦課決定処分(前記異議決定文は審査裁決によって一部取り消された後のもの)は、いずれも適法であり、さらに、原告は、昭和五二年九月期及び昭和五三年九月期において工事収入について過少に確定申告したのであるから、右各事業年度の右事実にかかる部分の税額に対してなされた各過少申告加算税賦課決定(前記審査裁決によって一部取り消された後のもの)は、いずれも適法である。

原告は、原告が工事収入について前記のような会計処理をして法人税の申告をしたのは、請負契約による工事収入はそれが支払われた事業年度における益金に算入すれば足るものと考えたことによるのであるから、原告には国税通則法六五条二二項(昭和五九年法律第五号所得税法等の一部を改正する法律による改正以前のもの)所定の正当の理由があると主張し、確かにそのような事情が窺われないではないけれども、右のような事情は、およそ右法条にいわゆる正当の理由に該当するものではないから、右主張は失当である。

3  さらに、原告は、昭和五二年九月期において、前記のとおり架空の外注費等を計上したのであるから、原告の右の所為は、法人税法一二七条一項三号所定の事由に該当することが明らかであって、右事業年度以後の事業年度についてなされた原告の法人税の青色申告承認の取消処分は、適法である。

六  そうすると、原告の本訴請求はいずれも失当であるから、これを棄却することとし、訴訟費用の負担については行政事件訴訟七条及び民事訴訟法八九条の各規定を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 村上敬一 裁判官 山下郁夫 裁判官 渡邉英敬)

別表一

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別表二

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別表二付表

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別表三

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別表三付表

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別表四

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別表四付表

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